ドアの前には息を切らした春樹が戻ってきていた。



「春樹…」

「もういいよ…兄ちゃんは誰にも救えないんだよ!」



「あぁ、そうだな…お前の言うとおりだよ」


俺だって、救ってやれねぇんだ。


「利琥、やめてよ!」

「本当の事だ」


―――分かってる。


「兄貴を助けたいんなら、お前が何とかしろよ」


―――最低だって、分かってるのに。


「僕には何にも出来ないよ…」

「また逃げるのか、お前は」


―――どうして俺は…いつもこんな風に。


「逃げてなんかいないもん」

「逃げてるよお前は。ビビってるだけじゃねーか」




「違う…違うっ……」


「いい加減にして利琥!可哀想でしょ!?」

「お前も、んな同情ばっかりしてんじゃねぇよ。…くだらねぇ」


―――傷付けるばかりで、誰も救えねぇ。


「ちょっ…どこ行くのよ!」

「俺の勝手だろ」




辛いのは俺じゃない。

俺を支えてくれてるみんななのに。



俺は……何も、誰も救えねぇ。