「祐樹の父親、いないんだ」
「え?」
潤は遠くを見つめながら、単調に言葉を紡いだ。
「…働きもしないで毎日違う女と遊びまくり、母親が必死に稼いだ金も奪っていく…ひどい父親だったらしい」
「そんな…」
辛い状況にあったのに、祐樹は笑って過ごしてたんだ…無理にでも笑って……。
「で、いなくなった。父親はある日突然いなくなった」
「いなくなったって…」
「警察に捜索願いも出したが、結局今も見つかってない」
「……」
「それでな、葉凪…。お前のお母さん…今どこにいるんだ?」
「へ?」
急に何?
お母さんは海外に仕事に行ってるって、お父さんに聞いてるけど。
「海外に仕事…」
「違う。お前の母さんは、この世に…いない」
「何言ってるの?」
こんな時に冗談言うなんて…。
「君のお母さんは、祐樹のお父さんと…その」
「何よ、はっきり言って!!」
私は不安ともどかしさで、つい声を荒げてしまった。