「あの…」
後ろから声を掛けられた。
「え…私ですか?」
見ると若い男が困ったように笑っていた。
「はい、ちょっといいですか?道を聞きたくて」
あ、道か。
「全然良いですよ」
私は丁寧に教えてあげた……つもりだったのに。
「あー…いまいち分かんないので場所…連れてってもらえますか?」
何か面倒臭くなっちゃったけど…責任は持たなきゃ駄目だよね。
「じゃあ…ついてきてくれます?」
「はい、ありがとうございます」
私は学校とは違う方に歩き出す。
しばらく歩くと。
「あの…こっから行きません?」
ここ、路地裏じゃん。
でも、確かにこっちから行った方が早いか…。
私は薄暗い路地へ。
その瞬間、男は持っていたタオルを私の口に押し付けた。
「ん…っ!!?」
タオルには変な液が付いていて、除々に意識が遠のく。
その時、男の顔がニヤリと笑ったような気がした。
そして意識が飛んだ。
夢を見た。
知らない男達に囲まれて、手を縛られ……。
男たちの荒い息。
夢ではないような気がしてゆっくり目を開ける。
「あ、おい!起きたぞこいつ」
見ると、夢と同じ光景。
「……っあんたたち、誰!?」
逃げなきゃ。
でも、体が動かない。
「ヘヘヘ、動かないだろ身体。薬を使ったからな」
「やだ…離してよ!!」