僕は全身から血の気が引くのを感じた。 あの時……オジサンの手は、女の人の……首、に……。 しかし、どうしてもそのオジサンの顔が思い出せなかった。 靄がかかったみたいに、顔の部分だけ思い出せないんだ。 僕はただ、日々繰り返し垂れ流されるその事件のニュースを、耳を塞いでやり過ごした。 やがて世間はその事件を忘れ。 僕も忘れた。 ――数年が経った。