僕は息が切れるくらいに走った。
走って走って、家に着く頃には汗だくで、呼吸がうまく出来ないほどだった。
どうしたの?!とびっくりしてる母親に辛うじて笑顔を返して、僕はトイレに駆け込んだ。
こみ上げる吐き気に逆らえず、真っ白な便器にかがみ込む。
胃の中の吐き出すものがなくなるまで吐いた。
最後は胃液だけでも吐き出した。
「っ……ふっ……っはぁ………」
肩で息をしながら目尻から溢れた生理的な涙を拭う。
ドアの外、心配する母親の声が聞こえた。
しかしそれに答える気力もなく、僕は意識を手放すしかなかった。
――あのオジサンの手、女の人の………。