「何故、儂は濡れておる?」



不機嫌さ満載の声が、鋭く私に突き刺さってくる。


覚えてない……のだろうけれど。



「え、あ、いやぁ……えーと虎こぼしたんじゃ……」


「阿呆か。どうやって顔に茶を零す。第一儂の湯呑にはまだ入っておる。無くなってるのはお前のだろうが」


「はひっ……はい……」


「納得のいく説明をしてもらおうか」



いや、無理です。


会話の再現なんかしたくないし、説明したところで信じてもらえないような気がします。



愛想笑いを浮かべてみると、虎は呆れたような顔で長い溜め息を吐いた。


覚えていないのは仕方がないけれど。


原因は全部、貴方なんですからね!?