後頭部から手が離れ、麦茶したたる自分の顔へと向かう。



「……思李?」



次に何を言われようと、もう全力で逃げる! と決めていたところへ。


不意に、今日初めて名前を呼ばれた。



「……今は朝か?」


「へ……?」



前髪から麦茶をしたらせた虎の顔が、声が。



「いや、夜か」


「戻った……?」



あまり表情の変わらない、落ち着いた声の虎がそこにはいた。


何が良かったのか、いや麦茶のおかげなのか、ようやく朝虎モードが解除されたらしい。



良かった、と心底ほっとした。





……のも束の間。