ぼそっと零れた言葉に理解が追いつかない。


だけど虎は止まる私に構わず、口の端だけで笑った。



「会えばいつも座ってて、口しか動かねぇような人だった」



それだけ言ってまた箸を動かした虎を見て、漸く馬鹿なことを聞いたと気づいた。


そして母親に対するイメージが『置き物』であることに、胸が痛い。


黙ってご飯茶碗をテーブルに置くと、虎の溜め息が聞こえた。



「何で手前ぇが落ち込むんだよ」


「いや……なんか聞いちゃ悪かったかな……って」


「あのな、仲が悪いとかんなことたぁねぇんだよ。普段は知らねぇし、笑い声ぐらいは聞いたことある。ただ会えばそういう人だったっつっただけだ」



そう、言うけれど。


最初の言葉はあんまり良い意味に聞こえなかった。


戦国時代の母と息子の関係なんてわかんない。


乳母に育てられたのかもしれない。


でも……