「あぁ居た!ちょっとそこの子!そこの黒いワンピースの子!」



誰かが誰かを呼び止めてる声がした。






その瞬間あたしの頭の中で、小説のワンシーンが再生し始めた。








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「ちょっとそこの子!ピンクのマフラーの子!」

ピンクのマフラーの彼女は振り向いた。


「あたしですか?」


「あ、いえ、すいません人違いでした」



俺は何を期待してたんだ。
もう二度と会えないって解ってるのに
まだ心のどこかでもう一度君に出会える日を期待する自分がいる



「俺、バカだな…」

ひとりボソッと呟いた俺の声は人ごみに飲み込まれていった。

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「ふぇッ、んぅ…コウタはマイにはもう会えないんだよぉお…ひック」




なんでみんなあんな泣ける小説書けるんだろう

もう泣きまくりだよ…

涙3リットルくらい流れちゃったよ

蒸発しそう…嘘だけど





「ひひッ…また思い出し泣きだけみーたん泣き虫」


そういって笑うヒカルに一発食らわせてあたしは涙をぬぐった。







「ちょっと待ってってば!!!」





「ねぇ!ちょっと!」





あたしは誰かに肩をたたかれた。