「それに…現実的に物を言うならば。存在しえないんじゃよ。」
ロディーはカムイを見つめながら言う。
「軍をもしのぐマルテリウム技術を持つ『廃陸の旅団』の造り出した天空艇でさえアンバー・タワーの最上階までの上昇が限度と言われておる。」
「廃陸の旅団……天空より船から現れ、この世界のスフィアを独占しようとする反軍集団の一つ。」
旅団員はそれぞれ身体のどこかに旅団の証である"天艇より振り下ろされる大地を裂く大剣"のマークを刻んでいる。
そのマークがあるだけで反逆者として囚われる為に、ほとんどの団員は見えにくい場所にタトゥ-を入れている。
中には挑戦的にも頬や腕など目につきやすい場所にタトゥ-をいれるものがいる、そういった者のほとんどは自らの力に絶対的な自信を持っている者なのだ。
「良いか?人の行けぬ場所に都はできん。都ができなければ世界は栄えぬ。」
ロディーは空を見上げ言う。
「人のたどり着けぬ天空には何もない、ヴァルハラは存在しえない……これはあらがえぬ事実じゃ。さて、それよりもまずはガブゼリスに入ろうじゃないか。の?」
修道院に入るまでの道のりをカムイはしっかりと目に焼き付けた。
自分の目指す地の模写として脳裏に刻み込むために。
必ずある。と。
たどり着けるのだ。と自らに言い聞かすように。