【亮SIDE】
「……おまえ、本当にどうしたんだよ」
無口で弁当を食べる奈緒を不思議に思って聞く。
厚い雲が空を覆って、太陽の日差しが遮られる。
奈緒はうつむいたまま、小さな声で話し出した。
「佐伯さん……亮が好きなんだって」
「……」
その言葉に全く動じない俺を見て、奈緒は表情を沈めた。
「……やっぱり」
「は? なんだよ、『やっぱり』って」
「亮、こないだのバイトの休憩時間に佐伯さんに告白されたんでしょ?!」
少し怒りながらそう言う奈緒に、言葉を失う。
『告白』なんかじゃない。
だけど、佐伯との話は絶対に奈緒には話せない事。
言えば、きっと傷つくから。
あの事件が、自分のせいだって……自分を責めるから。
そうわかってるから、絶対に言わねぇ。
……嘘ついてでも、守りたいから。