昼休み、屋上に続く階段を駆け上がった。そして勢いよくドアを開ける。


「亮!」


屋上のコンクリートの床に寝ころんでいた亮が、あたしの声を聞いて起き上がった。


「……どうした?」


亮は少し微笑んで……優しく問いかける。

そんな亮の顔が、あたしの胸を締め付ける。


『亮はあたしに嘘なんかつかないよね?』

本当は……、佐伯さんとの事を問い詰める気でいた。

だから、走ってきた。

だから、亮の名前を叫んだ。


……決心が、揺らがないように。


なのに……そんな顔、反則だ。


今までだったら平気で聞けてたのに。

……ううん。きっと、気にもしてなかったのに。


誰とも本気で付き合っていなかったから、問い詰めたいほど知りたい事もなかったし、誰が嘘ついてるかなんて考えもしなかった。

……感心がなかった。


無くすものなんてなかったから、言葉を躊躇することもなかった。

もっと自分の言いたい事を言えてた。……今までのあたしだったら。



だけど今は……、聞きたい事もうまく聞けない。


本当は知りたいのに、言葉をためらう。



だって……、あたし、亮を失うのが怖い……。

怖いよ。