亮の様子がおかしい。

……多分、3日前のバイトの時から。


よくあたしを見つめてる。

真剣で、……少し悲しそうな目であたしを見てる。



「欲求不満なんじゃない?」


梓の言葉に、思わず飲んでいたレモンティーを吹き出した。


「あっ! ちょっとー」


梓がティッシュで机を拭く。


「……ごめん。だって、梓が変な事言うから」


あたしも取り出したティッシュで拭こうとしたけど、レモンティーは梓によって全部拭き取られていた。


「えー、だって、もう付き合って3ヵ月だよね? 

そろそろ桜木先輩限界なんじゃない? 

っていうか、あの桜木先輩がそんなに我慢してるのにも驚きだよねー」


……実際に付き合ってるのは1ヵ月ちょっとだけど。

でも、告白されたのは2ヵ月以上前だから……。

っていうか亮って、いつからあたしのこと好きだったんだろ……。


「……奈緒? 聞いてた?」

「え?」


聞いていなかったあたしに、梓がわざとらしくため息をつく。


「だからぁ、奈緒は大事にされてるんだから桜木先輩の気持ちも察して、奈緒から誘うぐらいの勢いでさ?」

「勢いで……何?」

「そんな事言えなーい」


ふざける梓に、口を尖らせて怒る。


「あたしからなんて、絶っ対、無理! ……っていうかその喋り方やめて」


語尾を伸ばしたりする甘えたような口調は、佐伯さんを思い出させるから。