「……水谷さんに言って欲しくないよねぇ?
ただでさえ、あの子引きずってるみたいだもんねぇ。
っていうか、今は被害者で通ってるけど、この事を周りに流したら、あの子加害者になっちゃうかもしれないし。
いじめられたりして。
だって、最初に裏切ったのは水谷さんだもんねぇ」
バカにしたように笑う佐伯を見て、昂ぶる気持ちを必死で抑えた。
女だからって理由からじゃない。
今手を出して……、奈緒に害が及ぶことが嫌だったから苛立ちを抑えた。
「……だからキスしろって?」
「そ。次バイトが一緒になった時でいいよ。
……お楽しみはとっといた方がいいしね」
行き場のない怒りに、部屋の壁を思い切り殴りつける。
そしてそのまま佐伯を見据えた。
「……おまえ最低の女だな」
俺の言葉に、佐伯が笑みをこぼした。