「黙っててあげるよ。そのかわり……あたしにもキスして?」
思わず顔を歪めた俺を見て、佐伯が薄気味悪く笑う。
「……黙ってて欲しいんでしょ?」
誘惑するような佐伯の目に、俺は笑みをこぼした。
「……なんだ、そんなことか」
佐伯の顔が明るくなる。そして、佐伯の顔が俺に近づいてきて……。
後、数センチのところで佐伯を突き飛ばした。
「きゃっ……」
「おまえとキスするぐらいなら、辞めてやるよ」
睨みつける佐伯を見下して、軽く笑いながら背中を向ける。
ドアに向かって歩き出すと、佐伯の言葉がそれを止めた。
「……やっぱりね。想像通り。でも、実はもう一つ話があるんだぁ。
それを聞いたら多分、亮くんはあたしにキスしたくなると思うけど?」
佐伯の意味深な言葉に、身体半分だけ振り返ってその姿を捉えた。
「……水谷さん、犯人の川口とは初対面じゃなかったって知ってた?」
「……―――」
視線の先で、佐伯が勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。