【亮SIDE】
「亮君、見ーっけ」
従業員室にノックもしないで入ってきた佐伯に、表情歪める。
「そんな顔しないでよー。せっかく2人っきりになれたんだから」
当たり前のように隣に座った佐伯が、俺の腕に自分の腕を絡める。
その手を振り払ってから、目を合わせないまま冷たく言う。
「……俺彼女いるんで」
俺の言葉を聞いて、佐伯が薄笑いを浮かべた。
「知ってるよ? 水谷さんでしょ?」
「……」
答える必要もないと判断して、何も言わずに目の前の雑誌を眺める。
そんな俺を見て、佐伯が意味深に微笑む。
「見ちゃったんだよね。先週ここでキスしてたでしょ?」
「……覗きなんて趣味わりぃな」
そう言いながら立ち上がった俺を、佐伯が計算し尽くされた上目づかいで見つめる。
「黙ってて欲しいよね? クビになっちゃうもんね?」
笑顔を浮かべたまま佐伯も立ち上がって……俺の首に腕を絡めた。