……あんなの、関係ない。

亮は佐伯さんに流されたりしない。


……そう信じているのに。

胸が言うことを聞かずに、騒ぎ続ける。



「先輩……佐伯さんの言ったことなんて気にすることないですよ。

だって桜木さん、明らかに嫌がってるじゃないですか。

佐伯さんなんか眼中にないですよ」


励ましの言葉も、まるで頭に入らない。


「うん」


あたしは、目の前にあるグラス全てを洗い終わるまで、口を開かなかった。

……何も話す気になれなかった。



静かな水の音も、気持ちを落ち着かせてはくれなかった。



水と一緒に、不安ばかりが、あたしの中に注がれていくみたいだった。