少し頭痛がするからと、二次会に行く同期達を見送り、百合は一人で最寄の地下鉄駅への階段を降りていった。

慣れないスーツにヒールでの立食パーティだったため、かなり足が疲れていた。

帰途を急ぐOLやサラリーマンに追い越されながら、足取り重くゆっくりと歩いていく。
改札の手前に邪魔気にある柱の脇の鏡に写る自分の顔を覗き込み、前髪を直した途端、白い手が自分の肩を叩こうとしているのが写り、ハッと後ろを振り向いた。


―誰もいなかった。


見間違い?
百合は首を捻りながら、改札に向かいながら、入社式で隣に座った佐恵子の妙に白い手を思い出していた。