図書館から出ると前の方に一人の老人が杖をついてゆっくりトボトボ歩いている。

さっきは止んでいた雨が少し降っているのに傘をさしていない。


きっと図書館から出た老人だ。
傘を家に置いたままで来ていたのだろう。


僕だってこんな予測がつかないような気候だったら傘なんて持ち歩かない。



スーツ姿をした今流行りのモデルの髪型をした女の人は携帯片手に傘をさしながら足早に老人の前を通り過ぎる。


スーツ姿の若い社会人二人組は傘をお互いさし談笑しながら老人の前を通り過ぎる。



皆見えていないのか?僕の錯覚なのか?と思える程皆素通りしているのが見える。


僕は足早に老人の隣に行き傘をさし出した。


周りから良い人に見られたいとか良い事をしている自分に自己陶酔を覚えるとかそんな事じゃない。


人としてこれが当然の事だろう。

と僕は思った。



老人は小さい声で「ありがとう。」と僕に行った。

特別話をするわけでもなく、ゆっくり、トボトボ僕も傘をさしながら歩いた。