色んな事を言いたくても、佳依やレイナを前にすると

感情が邪魔をして上手く言えない。

怒りや失望感の方が大きくて、大切な事はなにも言えなくなってしまう。

それに
これ以上、話すとオレの方がどうにかなってしまいそうだった。





ホテルから外に出た時、一人の男に声をかけられた。

「もしかして青山…透依さん?」

「…そうですけど、あの…」

「警察です」

そう言われて周りを見渡すと、黒塗りの覆面が数台と警察官らしいのが何人もホテルの周りを囲うように立っていた。

オレの心臓の鼓動は早くなり、汗も出てきた。

「青山佳依と織江礼奈が居るからと、青山佳依本人から連絡があったんです」

「佳依から…」

「二人と一緒でしたね?」

「はい」

「二人はどこに?」

「まだ部屋に居るはずです。最上階の部屋」

そう言うと、数人がホテルの中に入っていった。

とうとう捕まるのか…

でも、それでいいんだ。二人にとって、それが一番いいんだ。

もし今後、また同じ事を繰り返すようなら

オレ、怒りすぎて殺すかもしれない。

「貴方からも事情を聞きたいので署までご同行願います」

「わかりました。行きます」