──私の宝物が燃えている。

真っ赤な炎は生き物のように家を包みこんで、抱きしめるように家の壁や柱を灰へと換えていった。

私の幸せだった時間も全て空へ昇っていく…

私は呆然と、その光景を眺めることしかできなかった。

何人もの消防士が消火活動をしてるけど、全く無意味なものに思えた。



「れ、礼奈?!」

騒ぎの中から私を呼ぶ声に驚いた。
振り返ると、お義父と義妹が立っていた。

「お、お義父さん…千夏(チカ)…」

最悪…
この世で一番会いたくない人達。

私が逃げようとすると千夏は私の両腕を掴み私を睨みつけた。

「…人殺し」

「ち、千夏…」

「警察がアンタの事を聞きに来たわ!ろくな事をしない人間だと思ってたけど、ホントその通りだったわね!」

「…」

「キャバ嬢?ドラッグの売人?ドラッグ常習者で挙句、人殺しまで?」

「…どうして家が燃えてるのよ。人殺しが育った家はもう嫌だってわけ?」



────パシッ


千夏が私の頬を殴りながら怒鳴った。

「放火よ!ネットでアンタの実名と写真と、この家の住所が晒されて、脅迫の手紙と電話がたくさん来たわ!

全部アンタのせいよ!」