絶望のふちで、アズマがあたしに言ったこと。

信じたくない真実を見せられて、そのうえまだあたしを苦しめる。

「お兄ちゃんに言われたからなの?別にあたしの事が好きってわけじゃないなら一人で逃げればいいじゃない!

あたしを守るなんて、義務でもなんでもないのに!」

「そんな事は逃げた先でゆっくり話そう。とにかくここから出なきゃダメだ!」

「'そんな事'じゃないよ!あたしにとっては重要なことなの!

とにかく、あたしはアズマにはついて行かない!もうほっといて!」

「雨峰!」

あたしはアズマを部屋から追い出して、ドアを閉めた。

「おい!開けろよ!雨峰!」



…だって、もう嫌なんだもん!

アズマと一緒に居たくない。逃げるのも嫌!

アズマは嫌なことばかりする。

だから嫌い!
嫌い!嫌い!大嫌い!

アズマを好きになりかけてた自分も嫌い──






他の人と、恋をすれば忘れられるだなんて

そんなに簡単じゃないんだよ

お兄ちゃん──





あたしは一人の人間として、穂貴を愛していた。

結婚できなくてもよかったの。

彼に愛され、守られる存在でいる事が

あたしの幸せだったよ…