「離してよ!!!!」

嫌がるあたしを離さず、アズマは何度も謝った。

「──ゴメンな…」

あのアズマが初めて謝ってる。
そんな事にも気づかないくらい、あたしは泣きわめいていた。

「…お兄ちゃんは目を覚ますもん…」

誰かにそう言ってほしかった。

『穂貴は目を覚ますよ』って。

信じてるけど不安なの。このままお兄ちゃんの心臓が止まってしまったらどうしようって

心の隅で思ってる事を、アズマにバカにしたような口調で言われたから

スゴく傷ついたの…

でも、あたしはアズマの胸で泣くしかなかった。

包み込むような優しいアズマの胸の中。

ちょっとだけ…アズマに頼れたらいいなって思ってるの。

好きになれたら楽かもしれないって。

でもお兄ちゃんの存在が大きい。

「ゴメンな。俺、何にも考えずにヒドイ事言って…
でも、お前に惚れたって言ったのは本当。だからさ、穂貴が目覚めるまで

俺と一緒に居てくれるか?」

「…お兄ちゃんが…目覚めるまでなら…ね」

迷いながら、あたしは答えた。

「ゴメンな…」

その後もアズマは何度も謝った。なぜ彼がそれほど謝ったのか

あたしは
ずっと後になって、そのワケを知った…