「美夜がダメなわけじゃないんだ…」

ダメなのはオレの方だと思う。
心変わりをしたオレ。彼女を平気で傷つけてるオレ。

でも、美夜はオレを責めずに自分を責めていた。

「人間的にダメだから、平気で捨てられるのよ…

私の事、ホントは遊びだった?簡単に捨てるつもりで付き合ってたの?今まで交わした約束も、同棲したいのも将来の事を考えてガマンしてたのに

全部ウソだったの?ご両親への挨拶もフェイクだったの?」

「…そんな事ない。オレだって本気で好きだったよ…」

ワガママの少ない女。大人の女。オレを愛してくれた女。

学歴もあるし、一流企業に勤めているし、彼女のご両親だって大きな会社を経営してる。

ウチの父親的には満足のいく、申し分ない相手だった。

もちろん本気ではあったさ…

でも、もう──

「これからはオレ、アイツの事守りたいんだ…ゴメンな…」

「嫌…透依……っ…ヒドイよ…ヒドイよぉ…」

美夜は泣きじゃくっていた。
こんな姿の美夜を見るのはきっと…最初で最後だろう。

「ゴメンな…美夜…」

「…嫌い…」

そう呟くと、彼女はフラッと立ち上がり流しに置いてあった包丁を手首に当てた。