「うん…ちょっとな」

曖昧な返事をして、オレは部屋に入った。

見慣れた部屋なはずなのに、違和感を覚える室内。

美夜はエプロンを外し、オレに甘えてきた。

「透依、すぐにご飯食べる?それとも──」

美夜がsexを望んでいるのはすぐに分かった。
オレの首に回す腕。
もう片方の手はオレの下半身に伸びた。

その美夜の手をオレは払い退けた。

その態度に、美夜はすぐに気づいた。
元々、頭のいい女だ。オレの態度の変化を敏感に感じ取っていただろう。

何も言わずに、美夜は立ち上がり言った。

「ご飯食べよっか」

──もうムリだ。

これ以上は美夜に悪い。

そう思う反面、レイナの顔も浮かぶ。美夜よりもレイナに悪い気がする。

「…透依?」





「美夜、別れよう…」



その言葉を聞いた途端、美夜の顔色が変わった。

「なに…別れようって…どう…して…」

…隠していても仕方ない。隠すことは卑怯なように思えたから。

「他に好きな女ができたから」


「…い…や…」

美夜は目にいっぱいの涙をためて泣くのをこらえていた。

「美夜」

「嫌!嫌っ!イヤー!!私、絶対に別れない!ふざけた事言わないでよっ!」