ヤツの手があたしを離すと、今度は帽子男があたしの腕を掴んだ。

「弱え~ビビってやんの!ホラ、行くぞ!ボーっとしてんな!」

「う、うん」

リーマンから逃げられても、今度はこの男にヤられちゃうのかな…

明らかにリーマンよりはお金なさそうだし、お金貰えるだけリーマンの方が良かったかも

…なぁんて思いながら、帽子男に腕を引かれ公園を出てちょっと歩いた所で恐る恐る聞いてみた。

「あ、の───アズマ…さんっ!?」

「お前バカだろ!!こんな所で名前呼ぶなっつーの!」

「す、すいません…」

それから黙ってついていくと、24時間パーキングに停めてあったBMWに乗せられた。

外車なんて初めてだし、しかも高級車…一体何者だろう?

「もしかしたら俺、警察にマークされてっかもしれねーから、あんま外をうろつきたくないんだよね」

「はぁ…そう…っすか…大変っすね」

警察にマーク?
なんかおかしな事言ってるよ~この人…

何が起きてるのか分かんない。誘拐ではないのは確かだし、レイプ目的でも…ない気がするし。

BGMもない車内。静かなエンジン音だけが響いて聞こえる。

「アンタ、穂貴の妹だろ」