店を出た所でカイトに手首を掴まれた。



「!」


「送って行くと言っただろう?」


少しの距離だが走った花音の息は荒く、落ち着かせようと大きな呼吸を一度した。



「酔っ払ったお客様には全員送っていくんですか?それともあたしが高校生で補導されたら「SION」に迷惑がかかるから?」



「花音ちゃん?」


薄いワンピース一枚の花音は寒さにぶるっと震えた。



お気に入りのグレーのコートを思い出した。


が、コートの事などこの際かまわなかった。



――早く自分の知らないカイトさんから逃れたい。


「離してくださいっ」


掴まれていない方の手でカイトの手を振り払おうと動かす。



だが、カイトの手は花音を離さなかった。