「小夜子!いったいどうしたんだ!?」


カイトがコートの裾をはためかせて足早に歩いてきて、開口一番声を押し殺して聞く。



「ごめんなさい」



幸い周りの席には誰も座っておらず聞き耳を立てるものもいない事にホッとする。


カイトは小夜子の目の前のイスに座ると、すぐにアルバイトらしきウェイトレスがにこにこしてやってきた。



カイトはコーヒーを2つ注文した。


小夜子に聞かないのは昔から小夜子もコーヒーが好きなのを知っているからだ。


カイトが小夜子の左の指を目ざとく見た。


――指輪は・・・?


カイトの視線に気づいた小夜子はとうとう言わなければと緊張が走った。