カイトは無言で車を運転していた。


助手席に座る小夜子は時折、カイトに視線を投げかける。


その視線を知ってか知らずか、カイトは黙っていた。



――嘘を知っていたら食事やドライブに誘わないよね?





到着した場所に小夜子は喜んだ。


デートで数回遊びに来た海だ。


「懐かしい・・・・でもあの時は夏だったね?」


2人で夕方まで遊び、近くのホテルに泊まった事を思い出した。


小夜子は4年ほど前に来た海を思い出していたが、カイトは違う場所だが花音と行った海を思い出していた。



凍えるほど寒かったのに車の外に出て海を楽しんだ花音の姿が目に浮かぶ。



『ありがとう カイトさん』


――初めて遠出したデートだった。



『カイトさんの手が暖かいからすぐに温まります ずっと握っててくれますか?』



――寒さに冷たくなった手を花音ちゃんは俺の手に絡ませた。