カイトは腕を少し上げて腕時計を見た。


「行こう、レストランを予約している」


わざわざ最高級ホテルの最高級レストランを予約したカイトに小夜子は戸惑う。


――レストラン?


カイトは小夜子に笑顔を向けられなかった。


どうしてもさっき会った花音の顔を思い出してしまう。



――花音ちゃん・・・。



胸元のポケットに忍ばせた赤い指輪のケースを今すぐにでも捨てたくなる。



――俺は間違った事をしようとしているのか?