母と花音でタクシーの後部座席に座っていた。


「ママ、お店はどうするの?」


クラブ「カノン」は母の努力した賜物だ。



「はるかちゃんに譲ろうと思っているの 彼女は良くやってくれるから」


それは花音も賛成だ。


「・・・本当は花音にもフランスで一緒に暮らして欲しいと思っているのよ?」


「ん・・・」


携帯電話を肌身離さず持っている娘を見る。


――今日はずっと気にしているのね・・・。


花音は携帯電話を握り締めて車窓の外をぼんやり見ていた。