* * * * * *



カイトは花音の家の玄関前まで送ると帰って行った。



エレベーターに向かうカイトの後姿を見て悲しみが花音を襲う。



――なんでだろう・・・カイトさんが遠く感じる。





「ただいま・・・」


玄関を入ると黒革のビジネスシューズが目に入った。


その途端、花音は引き返したくなる。



「花音!お帰りなさい!」


だが、すでにリビングのドアは開いて母が出てきていた。


「ママ・・・」


「ごめんなさいね」


ごめんなさいは・・・父親が居るからだ。



花音は黙って自分の部屋のドアの取っ手に手をかけた。



「花音!?」



「・・・着替えてくる」