事務所を出てフロアーを見渡すと奥まった席に座っている小夜子と目が合った。
事務所からカイトが出てくるのを待っていたらしい。
カイトは真っ直ぐ小夜子の席に向かおうとした時、
「カイトさんっ!」
行く手をさえぎる女性が通路を塞いだ。
黒のシックなワンピースを着た香帆だった。
「香帆さん、いらっしゃいませ」
カイトが笑みを浮かべて挨拶すると、香帆は頬を膨らませてカイトの腕に腕を絡ませてきた。
「カイトさんっ、香帆のテーブルに来てくれるんですよね?」
上目遣いでカイトを見て長い睫毛を強調するように瞬かせる。
「あとで伺いますよ」