その場を去ろうと花音に背を向けた。



「カイトさんっ」



不意に名前を呼ばれ、振り返ると花音が背伸びをしてカイトの頬にキスをした。



「カイトさん、オヤスミナサイ」



真っ赤になった花音は急いで玄関へと消えた。





残されたカイトはフッと笑みを漏らす。


――あんなに可愛い顔で誘惑しないで欲しいな。抑えが利かなくなる。



花音の綺麗な髪に指を絡めたいとケーキを食べながらずっと思っていた。



――大事にしたい。



カイトは開いたエレベーターに乗り込むと20階のボタンを押した。