「SION」の前に停まったタクシーに香帆たちが乗って去ると、カイトは右手で左肩をもんだ。



事務処理で肩がこっていた。



袖をめくり時計を見ると時刻は9時45分。



――銀座まで15分ってとこか・・・。



ポケットから携帯を取り出して花音へかけてみる。



昨日と同じで呼び出し音がなるばかりだ。



――仕事中だから出られないのか?



呼び出し音を聞きながら事務所へ戻ると黒のロングコートに袖を通した。



「ヒデアキ、後は頼む」


「わかりました」



仕事の鬼のオーナーが私用で帰るのは珍しい。


フロントにいたヒデアキに後の事を任せてカイトは外に出た。