「えっ」

私の目の前で、一体なにが起っているんだ。

デブ社長が一枚の紙をビリビリとやぶってゆく。
そしてその紙は無数の小さな花びらの様にまでなった。

「これで文句はないね?」



バラッ



「ちょ・・・」

「お、岡野さまっ」

その紙を大きくバラまく。
ヒラヒラと紙は違う方向に舞っていて、なんだか綺麗だった。

まるで、白い雪が降っているみたい。

って、そんなポエムはどうでも良くて。

「し、社長!?!?!?」




「―――――鳳凰旅館と滝の宮旅館の合併は、なかった事にしよう」




「(はっ!?)」

「社長!?なんてことを!!」

・・・信じられない、私は呆気にとられた。
な・・・い、今の紙って。


鳳凰旅館と滝の宮旅館の合併証明書・・・?!!?


「こ、こんなバラバラに・・・!」

デッパ秘書はバラまかれた紙切れを集める。

「(な・・・)」

今の書類・・・

佐山さんのサインとデブ社長のサインはすでに書いてあった!!
しかもはんこまで!!

「岡野さま、津田さま、これで合併の件はなかった事で、よろしいですね?」

「ああ、もちろんだ」

デブ社長はさっき佐山さんが注いでくれた酒をクイっと飲んだ。
私は、怖さのあまりずっと下を向いている。

て、手が震えてきた。

「(宮比ちゃん、大丈夫?)」

「(は、はい・・・だ、いじょうぶ・・・)」

京さんは未だに私の肩を支えていて、暖めてくれた。
冷や汗が出てきた。


「・・・ふざけるなよ・・・」


「・・・津田さま?」

「(で、デッパ秘書?)」

急に立ち上がったデッパ秘書、紙切れを握っている。
あ、メガネが落ちそうだ。