「―――――合併の件はなかったことにして下さい」



「(はっ!??!)」

イキナリ連れてこさせられて、合併はなし!?
え、ちょ・・・

い、一体どういうことっすか!?

「ふん、なにを言う。アンタら始めたことじゃないか、今更キャンセルなんて無理だ」

「それを承知の上で断っているんです、お願いします」

私の隣で必死に頭を下げている佐山さん。
ちょ、ちょっと待ってよ。

が、合併って・・・あの三年後『鳳凰旅館』との合併の件じゃないよね?

「貴様、我が『鳳凰旅館』を侮辱しておるのかね!?ぇえ!?」

すると急にデブ社長の隣に座っていたデッパ秘書が前に出た。
ツバを思いっきり飛ばしながらからんでくる、汚いなぁ・・・!

「いいえ、私はただ岡野さまのお客様に対する気持ちが理解出来ないだけです」

「な、なんだと!?」

うわ、久々に佐山さん言うなぁ・・・
デッパ秘書は顔を真っ赤にしていちゃもんつけてくる。

「だいたいなんだね君は!?社長がお客に手を出したなんて、そんなデタラメ・・・嘘を甚(はなは)だしいぞっ!!」



ピクッ



「・・・それは聞き捨てなりませんね」

「(え?)」

「な・・・なんか文句あるのか!?」

急に私の後ろにいた京さんから言葉が発せられる。
なんだか穏やかではない。

「お客様、私を憶えてますか?」

「お、憶えているだと・・・?!」

すると京は私の隣に来た。
たらしていた髪をビシっと一つ結びにする。

「わっ!!」



グイッ



「この子をアンタらのセクハラから助けてやったのを、まさか憶えてない訳ないよな・・・?」

私の肩を強く抱き寄せる京さん、少しハラハラした。

「っく・・・!!」

「岡野さま、これでも言い逃れしようなんて思っていらっしゃいますか?」

「・・・」

佐山さんの一言一言に力がこもっていて、これはとてもじゃないけど敵わないと思った。
ほら、さっきまで叫んでたデッパも口を塞いでる。

「・・・君には参った、ほら、この通り」



ビリッ