「(だ、誰だろう)」

初めて涼と出会った日、初めて涼が男と知らされた時、初めて涼とキスした瞬間。
ヤバい、また涙がこぼれそうになった。

「っく・・・(なにやってんの私)」

「ぁ、あの」

「・・・?」

「よ、かったら・・・私の部屋で休みます?」

「(え?)」





「ご、ご、ごめんなさい・・・友達がさっき来て汚くしちゃって・・・」

「い、いえ・・・」

私は今、この子の部屋に来ている。

物が散乱しまくってて。

でも、その後からその子はちゃくちゃくと片付けていく。

いやぁ・・・意外と広いなぁ。

「ど、どうぞお水でも」

「どうも・・・」

部屋のど真ん中に置かれた小さなちゃぶ台。
そしてそのちゃぶ台のど真ん中に置かれたお水一杯。

・・・違和感が。

「・・・涙には、冷たいお水と目を冷やすのが一番なんです」

「え?」

「は、恥ずかしいですけど・・・私もココに入りたての頃は沢山、泣いてましたから」

「(大変だったのかなぁ)・・・」

その人はホウキを壁に立てた。
なんだかボロボロだ、もしかして愛用してる?

「ぇ、え、と。私、白金・都(しろがね・みやこ)って言うんです」

「(『言うんです』?)は、早瀬・宮比です・・・」

私達は沈黙で埋め尽くされた部屋を、ぎこちない会話から消していった。
でも、これはこれで楽しい。

都さんと言う人は、たまにしか私と視線を合わせなかった。

緊張のせいだろう、私もあまり上手く話せない。

「あ、すいません、なんだか急に部屋に上がらせちゃって。めめめ、迷惑でしたよね」

「ぜ、全然。そんなことないですよ、ありがとうございます(ドモりすぎ)」



「「・・・」」



私は沈黙に耐えられず、ひと口お水を頂く。

「!」

ぬるそうな水、が、かなり冷たかった。
驚いたぁ、これって水道水だよね?

「だ・・・ど、どうかしました!?」

「えっ、いえ、お水が冷たかったから・・・」

「つ、冷たすぎました?!!?い、今なんか暖かいものとってきますね!?」

「え、ちょ・・・」