なぜか私の手、体は震えていた。
どうしよう。どうしよう止まらない。

と、止まれ。

「宮比・・・ちゃん?」

「ぇ、あ、いやこれはなんと言うか・・・(止まれ止まれ止まれ)」

本当、息が詰まってるみたいな感じ。
生きてる心地が、あまりしないんだ。

「(この真夏に寒いわけないしね)」

「大丈夫?」

「は、はいっ」

涼が私に抱きしめる時は、いつも必ず甘えてくる様だ。

こう・・・頭を私の首筋にこするっていうか、うずくまる?っていうか。

私より年上なのに、子犬みたい。
でも、抱きしめる力は強くて。

ギャップがあるんだ。

「(駄目だ、京さんを涼と比べてる)」

ヤバい、とうとう涼に蝕(むしば)まれてる。


 * * * 


「・・・宮比」

たった今、僕の目の前では。

京が宮比を抱きしめていて、つか、その前にキスをしていた。
そして、僕の左手はかすかに震えていた。

怒り、いや、それより嫉妬心の方が上回っていた。

「(なんでなんだよ)」

ヤバい、思ったより傷ついたかも。

そして、僕が一番にショックを受けた事。
それは。



・・・宮比が、抵抗しなかった。



いや、分かってる。
宮比にそんな生意気な事、僕にしか出来ないなんて。

・・・でも、僕は残った1%に全てを賭けたつもりだった。

「なんで・・・」



胃がなんだか無性にキリキリする。



「(司と華はどこだよ)」

花火は未だにあいつらを美しく照らしていて。
僕は一瞬だけ、京と僕が入れ替わったらなんて妄想していて。

本当に、実の兄貴を力一杯殴りたいと思った。

「(でも)」

そんな事、出来るはずがない。

だって・・・宮比がその場にいたら。
即効、僕が悪者扱いだ。



「(誰のためだと思ってるんだよ)」



君の、ためなのに。