まるで時が止まっているかの様で。

僕は、それを動かす事は出来なかった。

宮比が奪われるっていうのにも関わらず。

僕はただ、花火の音を聞いていたんだ。







「・・・大好きだよ」







一番魅力的な声で、一番愛しい言葉を京さんに言われて。
少しだけ、ちょっぴり泣きそうになった。

それを私は惨めに感じた。

「・・・あ」





そして気付いた時には―――――優しく唇を奪われた。





ドーン!!



「(・・・涼)」

こんな大事な時に涼を思い出すなんて、私はなにを考えてるんだろう。
最高なのに、最悪で。

もう訳が分からないよ。

「(涼・・・どこなの?)」



やっぱり、みんなには会えなかった。



「・・・」

愛を誓ったかの様に見えた私達。
でも心は、通じていたとは・・・思えない。

きっと幸せだと思った。

京さんは私の運命の人だと思った。



本当に―――――思っていた。



「(なんで涙が・・・)」

花火が夜空で滲む。
眩しい。



ねぇ、これは幸せっていうの?



「・・・抱きしめても良い?」

京さんが微笑みながら言う。
これで嫌だと言ったらどうなる?



「・・・うん」