「え、でも宮比ちゃん、なんでまたうちに?」

「ぇ、あ、涼が友達呼んで遊びに来たんです」

「そうなの?もー、前日に教えてくれればいいのに・・・」

澄さんの左目の下には小さなほくろがある。
それが私にはとても魅力的で、昔よく憧れたものだ。



ほんと・・・懐かしいな。



「なんで宮比ちゃんここに?」

「(あ、そうだ!)そ、それが旅館が広すぎて・・・」

「あらー?迷ったの?」

「は、恥ずかしながらも・・・」



だって広すぎなんだもん!!



「良いのよ、ここにくるお客様はみんな迷った事あるから!宮比ちゃん、どこの部屋?」

「と、時の間です・・・」

「え、時の間!?」

「え・・・どうかしました?」

佐山さんは急に驚いた表情で言った。
ど、どうかしたのかな。

「大変、それ誰が言ったの?」

「み、美土里さんが昨日貸してくれたんですけど・・・」

「ヤッバ、どうしようかなぁ〜・・・」

佐山さんはたまに素に戻る時がある。
まぁ、今のとか。

「な、なんかまずかったですか!?」

「う〜ん・・・昨日から泊まってた偉い社長さんがそこに今日移るのよ・・・参ったわぁ」



「・・・偉い・・・社長?」



「そうなの、うちの常連さんなの」

・・・も、もしかして。

「さ、佐山さん」

「ん?」

「そ、その社長って・・・昨日から泊まってるんですよね?」

「そうだけど・・・どしたの?」

昨日から?
私達も昨日から泊まって、温泉に入って・・・

しゃ、社長って・・・まさか!!

「も、もしかして、その社長ってめっちゃメタボリックでバーコードハゲで、隣に必ず出っ歯のムカつく秘書みたいなのがいる・・・しゃ、社長さん!?」

「そ、そうだけど。知り合いなの?(バーコードハゲ・・・)」

やっっぱり!!!





「ど、どうしよう佐山さん!!!(泣)」