ふと、キスの間に脳裏に過る斉藤さん。

なんだか無性に。



怖くなった。



「・・・っ」



バッ!



「っ・・・(嫌だ私・・・)」

べ、別にやましいこととかしてないのに・・・
私は涼を突き飛ばした。

ていうか、今回は急にキスした涼が悪い。

「・・・どうしたの宮比」

「ぇ・・・?」

涼は鋭い目つきで、まるで私ごと突き刺す勢いで見つめてきた。
さっきまでの涼はいなく、空気が凍る。

なんか、笑えない。

「ど、どうしたって・・・それはそっちじゃ―――――」





「―――あの斉藤って奴と、付き合うの・・・?」





ズガンッ


「そ、それは・・・(なんで斉藤さん!?)」

急に強い弾丸で胸を撃たれたような衝撃。
こ、言葉って・・・時に辛いものなんだと痛感する。

「・・・そうなの?」

「(そんなわけないじゃん・・・)」

私はそう言おうとした。

・・・でも。



「・・・っ別に涼には関係ないじゃん!!」



響き渡る声。

なっっ・・・んで、私はこんなにも馬鹿なんだろう。
私は真っ先に謝るのではなく、凄く後悔した。

居たたまれない気持ちで、私はうつむいてしまった。

「・・・っ」

「・・・(ごめん涼、ごめんなさい)」

心ではこんなにも許しをこいてるのに、口が動かない。
お願い、分かって涼。



こんな苦い思い、嫌だ。



「・・・」

唇を噛む。




「・・・そう、悪かったね」




『ズガンッ』


「じゃ、僕は帰るよ。失礼したね」



トットットットッ・・・―――――。



消えた足音、消えた空気。

心臓をわしづかみされたような罪悪感。



涙は、出ない。