「取りあえず、全種類1パックずつくれ。焼き鳥は2本ずつで」

全部よりは遥かに経済的な注文に訂正して、俺は財布を覗いた。勿論、割り勘だろうから850円だ。

多少不満気にしながらも素直に包装し始めた美月と、その様子を柔らかな笑顔を口元に浮かべて眺めている宏。俺はそんな2人の間に挟まって、慣れきった暖かく複雑に絡んだ雰囲気に静かに身を沈めていた。

2年になって何があったのかは知らないが、彼らは急に仲良くなった。まるで宏の性格が移ったかのように明るくなった美月が俺達の仲に加わったのは、夏休みを過ぎてからだっただろうか。彼の美月を見る目の優しさに気付いてからは、俺は感覚的にただの仲良し3人組じゃ居られなくなった。

「はい。お待ちどうさま。アツアツだから火傷しないように食べてね」

ビニール袋を受け取って勘定も済ます。美月の気遣いにも軽く頷いて返しながら、何か場を繋いで長く2人が居られるように配慮をするべきなのか頭の片隅で言葉を探すが、上手く見つからない。不安定な関係で上手く自分の立ち位置を見定めるのは、非常に難しいことのように感じる。