ハンドル越しに感じる振動に意識を向けながら、俺は仲良し3人組のテーブルを目指した。ポットから香ってくる芳しい紅茶の香りに、紅茶中毒者の俺は舌があの独特の苦味と甘さを求めて疼き始めるのが分かり、何故だか面白いと感じてしまう。

「お待たせいたしました、お嬢様方」

ソーサーに乗せたカップに1人ずつ紅茶を注ぎながら彼女達を盗み見ると、皆が皆目を輝かせて3段トレーのケーキセットに見とれていた。その様子を見て零れ落ちた俺の小さな笑みも、彼女達は気が付いていないのだろう。

「どれからお召し上がりになりますか?」

惚けている彼女達にそう問えば、3人組の中でも特に賑やかな平川が我先にと手を挙げた。

「そうね。じゃあ私はミルフィーユから頂こうかしら」

俺の注文通りにお嬢様になりきる平川に、残りの2人が笑った。口に手をやり肩を震わす東山と、あははと口を開けて愉快気に笑う七海。

仲良しの癖にどこまでも似ていない彼女達は、ことごとく行動に差が出る。一緒にいると仕草や言動が似てくるものだが、全くそんな様子もない。元気で明るい犬のような平川、大人しく控えめで猫のような東山、少しばかり豪快で男勝りな七海は熊のようだと俺には勝手な位置づけがある。