1日で過ぎ去ってくれる体育祭がまだましだ。何で、文化祭ばかりこんなに大々的にするんだよ。どうやら世間という物は、俺の理解の範疇を越えた遙か彼方でまわっているらしい。

ふと窓の外に視線を移すと、グラウンドで様々な露店が立ち並んでいるのが見えた。この3階からでも、派手な看板のお陰で何をやってるかが一目瞭然だ。

そう言えば、まだ昼食をとってない。疲れた頭で他人ごとの様にぼんやりと考えながら、焼きそばやら焼き鳥やら、たこ焼きやらホットサンドやら、やたらと食べ物ばかりが目立つ色とりどりの露店を見つめた。

「か、え、で!ほら、出来たぞ!」

「あ、あぁそうか」

いきなり肩を叩かれびくりと体を強ばらせると、宏に苦笑いで返された。目を細め、口端を緩く持ち上げるその笑い方は、宏が人一倍優しい穏やかさを明るさの中に隠し持っているということを、いつも俺に実感させる。

「慣れないことやってるから、やっぱ疲れるよな。俺は好きなことやってるだけだけどさ」

ワゴンに紅茶のポットやカップ、ケーキセットの乗った3段トレーを乗せるのをさり気なく手伝いながら、宏は俺を心配するように言葉をかけた。小さな気遣いが素直に嬉しくて、自然と口元が笑みを形作るのがわかる。