「じゃあ、さようなら。止めちゃってごめんね。また明日」

「さようなら」

「……さようなら」

白石て別れの挨拶を交わして、俺と美月は暗い階段を降り昇降口に向かう。俺達が最後だったのだろうか。他の生徒の靴は既に無かった。

「美月」

「ん、何?」

校門の前まで来て美月に話しかけると、さっきまでの不機嫌が嘘のように全開の笑顔が電灯に照らされた。また無視されるものだと思っていたので、その邪気のない笑顔に呆気にとられる。

「えっと……あれだ。今日は、家まで送るよ」

「へ!?だ、大丈夫だよ!」

なんだ、その慌てっぷりは。両手をぶんぶん振って拒否をされた。

「でも、今日の伝達放送で変質者が出たって言ってただろ。1人じゃ危ないから」

確か伝達放送によると、その女子生徒が被害にあったのは丁度美月の帰る方向だ。俺とて良識のある高校男児。こんなに暗い夜道を美月1人で帰す訳には行かない。……今までは、家まで送ったりなんかしていなかったけれど。

「大丈夫大丈夫!私、こう見えても結構強いんだからっ」

ボクシングか何かのファイティングポーズをとりながら美月が自信満々で笑う。彼女が言うと、本当に倒せてしまえそうだから恐ろしい。

「……確かに、美月なら変質者にも勝てそうだよな」

「でしょ!……って、喜んでも良いことなの?これは」

自分で言いだしておきながら同意をした途端、不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。