静かな教室に、時計の秒針の音とシャーペンの立てる小さな音がやたらと大きく響く。まだ校舎には生徒も沢山残っているだろうに、声がするどころか気配すら感じ取れない。

まるで、本当に世界で美月と2人きりになったような感覚。あり得ないことぐらい分かっているけれど。

「高橋君」

「何?」

しばらくの間黙って問題を解いていた美月が、突然に口を開いた。参考書から視線だけを美月に向けると、彼女は俯いて問題を解きながら話し掛けているようだった。俺は問題を解きながら彼女の話に耳を傾ける。

「兄弟ってさ、どんな感じ?やっぱり居ると楽しいのかな」

「……さっきの話の続きか?」

うん、と彼女は返事をして首を傾げ俺を見ている。

廊下で数人の生徒が話しながら帰る声がする。時計を見ると、もう閉館も近い。

「どんな感じ、か。考えた事もないな」

俺の場合姉とも兄とも仲が良い方だから、一緒に居ると楽しいと思えるし、会えないと体の心配ぐらいは多少にする。