「……趣味?」

「趣味ってのは、少なくとも自分がやりたくてやってる事でしょう?誰かから強制されているものを普通は趣味だなんて言わないし、高橋君はどんな事に興味をもてるのかなってね」

俺の空になったカップに新しく紅茶を注いでくれた彼女に軽く会釈をして、手に持ったままだったシュークリームの上蓋を外した。正しい上品な食べ方なんて分からなかったから、見よう見真似で上蓋にクリームを掬い、口へと運ぶ。

さっぱりとした甘さのクリームとサクサクと固めのシュー生地がとても美味しい。
趣味、か。

無いわけではないのだが、人に教えるのは少なからず抵抗がある。あまり高校生男子が持つような趣味ではないのだ。

「趣味はありますけど……」

「どんな事?」

「……言って、変な人だと思わないのなら教えますけど」

思うわけないでしょ。人体解剖のビデオ集めが趣味ですなんて言われたら、ちょっと考えるけどね。

そう言って彼女は苦笑いをした。……知り合いにそんな趣味を持った人間でもいるのだろうか。

人体解剖のビデオ集めなんかが趣味の人間を見たことはないが、俺と同じ趣味の男子も見たことはない。

「そんなんじゃないですけど、ちょっと普通じゃないかも知れない」

「ちょっとやそっとの事じゃ、驚かないから。ばーんと暴露しちゃいなさい!」

「……」

食べ終えたシュークリームのアルミケースを小さく畳んで、新しく入れられた紅茶に手を伸ばす。彼女は、居心地が悪くなるほど俺を凝視している。

「……先生は」

「ん、何?」

先生は、花が好きですか?

俺のその問いに、彼女は少し固まっている。数秒間俺を見つめたまま固まって、はっとしたようにまた動き始めた。

「お花?」