「紳士?姉ちゃんのちょっかいにも律儀に付き合ってくれるって意味で?」

「フェミニストって意味でよ」

非常に非生産的な議論を白熱させる残念な2人を後目に、俺はテーブルの上のユーストマに視線を向けた。バイオレットの優美な姿は、今日も今日とて元気そうで何よりだ。

3月に種蒔きをして開花するまで、とても苦労をした。初めての栽培にしては上手く育てることが出来て、その美しい姿を見る度に口元が綻んでしまう。18歳にして盆栽趣味の素晴らしさが理解できてしまっているのだ。お陰様で同年代の友人関係には必死だが。

「で、どうなの?」

「うえ?……あ、何?」

軽く宙をさまよっていた思考は、姉さんによって現実へと強制送還された。突然に肩を叩かれ緩んだ口から漏れた間抜けな声に顔が熱くなるのを感じながら、にやにやと笑う兄さんを睨み付ける。

「俺と姉ちゃん、どっちが好き?って話」

「あんた、好かれる要素があると思ってんの?って、違うわよ。学校はどうなのって話」

「姉ちゃんこそないだろ。いじめすぎだって」

「あれはスキンシップ」

質問に答えなくても、2人は相変わらずにこやかに笑いながら口論に精を出していた。ちなみに、どちらの好感度も大差ない。