「それに引き替え、楓はいつまでも可愛いわよね」

「……姉さん、嬉しくないよ」

手に顎を乗せて優しく微笑む姉さんに、俺は溜息をついた。油断は禁物だ、気を抜いたらすぐにドS達のおもちゃになってしまう。いつからこんなに笑顔に恐怖するようになったんだろう。純粋だった幼き日は、もはや遥か彼方。

「楓こそ可愛げないだろー?ついこの間まで、お兄ちゃんお兄ちゃんって頼ってくれたのにさぁ」

こんなに無愛想になっちゃって。

大袈裟に肩を竦めて見せた兄さんに冷たい視線を向けながら、もう一口紅茶を口に含んだ。甘い甘いクリームの味が舌にこびり付いて、なかなか流れ落ちない。

「兄さんに愛想振りまいてどうなるんだよ」

「なになに?ツンデレか、弟よ」

ツンデレってあれか、ツンツンとデレデレのやつか。リアルツンデレなんて、ムカつくだけだと思うんだが。いや、むしろムカつくという意味で言われているのか。

「馬鹿ね。楓はツンデレなんていう安っぽいものじゃないわよ。リアル紳士属性よ」

ねえ、と笑顔で同意を求められても、非常に対処に困る。大体姉さん、紳士を可愛いと思うような人だったのか。属性ってなんだよ、属性って。